・デジタルボリューム真空管出力LINEアンプ
以前から気になっていた、BB製デジタルコントロールボリュームICがあります。
Web上で紹介されてる記事の試聴記を見ると、ストレートな音、原音に忠実などと書かれているのを見つけました。
多分、このICに直接入力し、出力をパワーアンプへ直接接続すると上記の評価になるとは思いますが!
私の持論では、原音ってどんな音?=良い音?とは思っておりません。
私にとって、良い音とは、私が聞いて心地良く音楽を聴ける音です。
このIC自体、OPアンプです。
OPアンプの音に満足出来なくて真空管バッファー出力DACなど製作してきましたので、今回を同じ路線で行こうと思います。
1、製作前提条件
(1)プログラムは自作する。
専用のプログラム済マイコンがWeb上で販売されていますが、今回は自作にチャレンジします!
この事が一番の悩みでもあります、20年ほど前にZ80を少しいじっただけで今はほとんど忘れていますので・・・
だが!自作派、オリジナル派としては、買ってきてOKとはしたくない心境です。
さすがに、1からアセンブラーも辛い歳ですので、思い切ってコンパイラーソフトを買う事にしました。
使用するCPUは、Z80系、PIC、AVRなどが入手しやすいです。
コンパイラーとの兼ね合いもあり悩んだ結果、AVRにしました。
AVR用のコンパイラーを探すと、BASICとCのコンパイラーソフトを見つけて、昔々に勉強したBASICで行く事にし、
値段、機能などを検討して、FastAVRを購入しました。
謳い文句には、アセンブラーに匹敵する小サイズプログラムを生成とありますし、機能も豊富そうです。
(2)真空管バッファーを追加し、真空管出力にします。
これは、外せません!
2、回路設計
プログラミングを始める前に回路設計します。
マイコンとの接続、使用端子を確定させます。
BB製のICには、同一機能で2種類のICが出ています。
PGA2310:デジタル電源=+5V、アナログ電源=+−15V
PGA2311:デジタル電源=+5V、アナログ電源=+−5V
の2種類です。違いは、アナログ部の電源電圧です。
電源電圧以外にPGA2311には、選別品のAグレード品があり、ひずみ率が違います。0.0004%と0.0002%
・・・私は、この違いが判るほど良い耳ではないです
でも、Aグレードが入手できれば使ってみたいので、PGA2311で設計してみる事にします。
PGA2311なら電源回路も少し簡単に出来るかと思いますし。
2005/02
暫定回路図が出来ました。
回路図1 回路図2
あくまで初期検討段階ですが、構成としては、
・デジVRには、
PGA2311を使用します。
・PGA2311のドライブ前段にOPアンプバッファーを入れます。
データーシートに、カタログ値を満たす為には、低インピーダンスで入力ドライブする必要ありと記載されています。
接続される機器によっては、インピーダンスが高い可能性がありますので、バッファーを追加します。
まあ、最終的には必要ないかもしれませんが、安全策です。必要なければ実装しなければ良いですし。
・マイコンには、A/Dコンバータ内臓ならどれでもOKなので、当初8ピンの小型品を使用するつもりでした。
プログラミング開始の際になんとソフトが未対応である事が判り、対応品で安価なATTiny26Lを使用する事にしました。
・MUTE機能を持たせる。
MUTE端子を用意し押しボタンSWでON/OFF出来るようにします。またMUTE中を示すLEDを点灯するようにします。
・真空管には、少し趣向を変えて、6N1P(6DJ8、6922)を使用してみようかと考えています。
まあ、また気が変るかもしれませんが、プリアンプ出力ですので、電流を多めに流して使用したい為です。
最終的には、バラックテストの結果で決める事にします。
・真空管用高圧電源には、簡易型定電圧回路を採用します。
供給電圧を上げたいので、整流回路には、倍電圧整流回路を使って、トランスは今までと同じく安価な絶縁トランスを使用出来るよう
考慮します。
・基板サイズの関係で実現出来るか判らないですが、バランス入出力用ICを実装させたいです。
基板設計時に何時も悩むのが、いかにして基板サイズを小さくするかです。
1cm大きいだけでも、けっこうな価格アップになります。
マイコンとデジVRの接続端子を決めたらプログラミング出来ますので、とりあえずこの暫定回路で進めることにします。
3、プログラミング 2005/02
プログラミング開始です。
BASICコンパイラーを選んで正解でした。昔々の記憶がよみがえり、試行錯誤でしたが、なんとかスムーズに音量調整
出来るようになりました。
ATTの可変範囲は、−60dB〜+3.5dBです。
このままだと完全に音量を絞り切れませんのでボリュームを約95%以上絞った場合は、強制的にATT∞にするようにしました。
まあ、プログラムは今後いくらでも書き換え可能ですのでとりあえずよしとします。
PGA2311からの音は、評判通りストレートで飾りつけが無い音でした。
(裏話)
ここまで来るのに実はけっこう時間がかかってます。
(空いてる時間に、少しずつ行ってました。HPで紹介してやっぱ出来ない・・・なんて恥ずかしいので目処をつけてから書いてます(笑))
PGA2311の使い方で随分悩みました。
当初、電源ONでデーターを送っているにもかかわらず音が出ないのです・・・
データーは規定通り送信されているのに・・・悩む悩む・・・
色々試して、データーシートでは未記載!?でしたが、電源ONの後すぐにデーターを送っても動作しない事が判りました。
電源ON → 少し待つ → ATT∞データー送信 → 少し待つ →音量データー送信
の手順で動作させる事が出来ました。
これで正解かは不明ですが、動いているからOKとします!
今から考えれば、CPUとPGA2311とで電源ONでリセットの時間が違う為だったかと思います。
4、バラック試作 2005/02
バラックでの試作(動作確認)を開始します。
暫定回路より多少部品定数の見直しを行い、作業開始しました。
テストは、高圧電源部より開始します。
基準電圧には、75Vのツェナーダイオードを3本直列にして、約225Vを得る予定でしたが、実際に試作してみたら、
直流出力で約240Vになっています。
75Vのツェナーダイオードの規格を見ると、得られる電圧が、70V〜80Vとばらつきがあります。
上限に近い物の組み合わせになったと思われます。
真空管カソード・ホロワ回路は、電源電圧の適応範囲が広いので、多分問題ないと思います。
まあ、回路的にも+−10%ぐらいの違いは許容範囲ですし!
+−10%なら、200V〜247Vです。
真空管回路のテスト時に動作を確認する事にします。
方針変更 2005/02
当初、真空管には6N1Pを使用しようかと考えていましたが、WE−396Aの音が良く、やはり、5670系で行く事にします。
ヒーター電圧の違いでWE407Aなどもありますので、ヒーター電圧さえ変えれば、色々取替えて楽しめるかと思っています。
と言う事で、電源回路は、DACUの回路と同じになります。
デジタルボリューム部の試作は終わっており、電源、真空管部は、実績のある回路ですので試作する必要がないです。
基板設計に入る事にします。
PGA2311は、選別品のAグレードが入手出来そうです。よかった!・・・ただDIPタイプではなくSOICになります。
基板もSOICで設計する事にします。
もし、入手できれば、WE407Aの音を聴いてみたいです。
その為には、ヒーター回路で20V必要になりますので、三端子レギュレーターで20V品を使う事にします。
でも・・・+20V出力の三端子ICって売ってるの!?(カタログには出ています)
通販が可能な秋月、千石のHPには、出ていないみたいです・・・地元の部品屋に聞いてみる事にします。
プログラム手直し 2005/02
今出来ている、プログラムでのATT可変範囲は、−60dB〜+3.5dBです。
完全にATT∞にする為、ボリュームを95%以上絞るとATT∞になるようにしていますが、
ATT∞直前(−60dB付近)でも音が聞こえてて、急に音が途切れる感じです。
まあ、−60dB付近でどの程度使用するか不明ですが、もう少し自然にならないか検討する事にします。
5、本格設計開始 2005/02
最終回路
回路図1 回路図2
上記を最終回路とし、基盤設計を開始します。
まる2日かけて基板設計を行いました。
最終的に基板サイズは、150mm×200mmになりました。
今までで一番大きなサイズになり、製作費が心配・・・
何時もの手法で基板にミシン目を入れて切り離し可能にします。
アンプ部(100mm×150mm)、電源部(100mm×100mm)、バランス入出力部(100mm×50mm)の3枚です。
基板イメージ
バランス入出力は、基板サイズの関係で、LRで2チャンネル分とします。
よって、LINEバランス入力1、プリ出力1で使用する事になります。
とりあえず、基板設計は終わりましたが、手持ちに無い部品がけっこうある為、部品発注し部品到着後にサイズ、位置などを確認して
基板チェックを行います。
2005/02
基板レイアウト変更中です。
CPUから、どの程度ノイズが出るか不明ですが、安全を考え、CPUとアンプ部を離すようレイアウト変更中です。
CPUは、電源基板側へ実装する予定です。
2005/02
基板変更と同時に回路も一部変更しました。
デジVR出力と真空管バッファー入力の間に2次LPF回路を追加しました。
LPFが必要なノイズ等は無いのですが、逆に周波数特性が良すぎる事が予想されます。
私の考えでは、帯域が必要以上に広い場合、音がキツクなる場合があります。
LPFが必要なければ、CRを未実装にし、抵抗部分をショート(ジャンパー接続)すればよいので基板パターンは実装しておきます。
あと、PGA2311直接出力と真空管バッファー出力とを簡単に比較試聴出きるように、PGA2311直出力端子も設ける事にしました。
基板化最終回路図
回路図1 回路図2
発注部品が、未着ですので最終チェック前ですが、基板設計も出来ました。
最終基板イメージ
20V三端子レギュレーター及びWE407Aも、なんとか入手できました!よかったよかった!
2005/02
注文してた、部品が届きました。
基板パターンチェックに入ります。
最低、2回は行う事にしてます。パターンミスが有ると最悪、数万円を捨てる事になりかねません!!
問題無ければ、基板製作会社へ見積もりを頼む事にします。
2005/02
音質調整用のCR2次LPFを実装してますが、定数の計算は簡単に出来ますが、音質との兼ね合いでは決まった値がある訳でないので
難しい所です。未実装で満足出きれば問題ないのですが・・・
下記HPで定数計算が出来るので利用しています。周波数特性がグラフ表示されるので便利です。
http://www.michinoku.ne.jp/~tsasaki8/crfil2/CRfil2.html
今回は、最初から真空管の違いで比較試聴する予定です。
手元に有る物で行います。
GE5670W、
WE396A、
WE407A、その他まだ手元にないですが、GE407Aも入手出来そうなので
試聴に加える予定です。
407Aの電気的特性は、当然ですが5670/WE396Aと同じです。ただしヒーター規格が違います。
5670は、5番ピンがシールドでGNDへ落として使用しますが、407Aの5番ピンは、ヒーターの中点とシールドを兼用しています。
よってヒーター電圧の接続を変える必要があり、基板上にヒーター接続を変更するジャンパーを付けています。
2005/02
基板チェックが終わりましたので、基板発注しました。
完成までに1〜2週間かかるので、その間にプログラムの見直しをしようと思います。
また、今回は、思い切って、電源トランスを特注する事にしました。
初めて特注トランスを使用するので音響用Rコアトランスで有名なフェニックスに注文する事にしました。
仕様は、
1次 0−100V
2次
0−120V(40mA)
0−8−20V(1A)
8−0−8V(0.5A)
静電シールド付
としました。真空管ヒーター用に5670と407A双方で使用可能なようにしています。
この仕様でR40サイズです。
また、私の設計する5670系真空管回路で今後も使うつもりで、数台まとめて注文しました。少し安くなりますし!
2005/03
プログラムを少し変更しました。
最終的にATTレベル -60dB〜+2dBとし、ボリュームを約95〜98%程度絞るとATT∞になるようにしました。
MUTE SWは、押している間のみONするタイプを使用し、押すごとにON/OFFを繰り返す仕様です。
タクトSW使用を前提にしています。
またMUTE LEDは、CPU起動確認も兼ね電源ON直後に約2秒間点灯します。
2秒後にLED消灯しMUTE状態が解除されます。
2005/03
GE407Aも無事入手出来ました。よかったよかった!
早く基板来ないかな〜
試聴予定の真空管はこれ!!12AU7などより小さくかわいい形です!!
WE407A
GE407A
GE5670
WE396A
2005/03
基板が到着しました。
さっそく組立てます。
基板のみの状態ですが、無事音だしOKでした。
PGA2311単体の時は高域がきつく感じられましたが、真空管バッファーを通って出てきた音は、高域が滑らかになり心地良く
聞こえます。
私好みの音です!
さてケースは、どの様な物にしょうかな〜!?
2005/03
特注したトランスが到着しません・・・早く来ないかな〜・・・
初めてフェニックスさんへ特注したが、予想以上に時間がかかるのが判りました・・・
2005/03
特注していたRコアトランスが到着しました。
電圧値名板を貼ってお化粧しています。!
さて、ケースは、どうしょうかな〜
せっかくトランスを特注して小型化出きるので、小さく作る予定!
デザインは・・・
2005/03
最近、本業が忙しくてあまり進んでいません・・・
しかし!
いつものごとく夜間の自由時間!!にWebでWE396A、WE407Aを探していました、
みな高い・・・良い音なのは判りますが・・・高い・・・
その中で、WEではないですが、よさそうな407Aを見つけましたので購入してみました。
スエーデンのエリクソン製です。
エリクソンは、あまり有名では無いので知らない方も多いかな!?
でも!!無線通信機器の世界では有名メーカーです。
定かでは無いですが、現在でも全世界の半数程度の携帯電話用無線機(電話機ではなく、無線基地局)
は、エリクソン製です。
日本でも、ドコモ、ボーダフォンに採用されています。
まあ、真空管には直接関係ないですが、昔から高い技術力のあるメーカーと言う事を言いたいだけ!
ウエスタンも音響機器以外に通信分野で高い技術力がありましたし!
高い品質を期待して購入してみました。
ちなみに、NECや、カナダのノーザンなども、同じく通信分野で定評があります。
さて音は、どうかな!?試聴真空管に追加してみます!!
2005/03
特に進展はないですが、製作用の部品を通販で集めだしました。
今日、バランス用のXLRコネクターが届きました。
色々なメーカーの品が有りますが、NEUTRIK 製のコネクターを使用する事にします。
一般的な、XLRコネクターは、オスとメスとでは、大きさが違うのですが、私が購入した物は、同じ大きさでネジ穴位置も同じ物です。
穴あけ寸法が同じで楽です。
青色のコネクターは、同じくNEUTRIK の「パワコン」です。
XLRコネクターを探してて見つけたので一緒に購入しました。
電源コンセントです。写真は、筐体側用で、ケーブル側用コネクターが他にあります。
取り付け穴サイズは、XLRと同じです。
今回、シャーシを取り付けスペースが小さく、何か良い物はないかと探していて見つけました。
今回、使ってみて、良ければ今後も使用するつもりです。
元々は、プロ機器用で簡単で確実に電源接続する為にあるようです。
2005/03
シャーシ加工をはじめました。
今回は、横幅210mmのシャーシを使用して小さく作る事にします。
今日は、フロントパネルの穴あけを行いました。
デザイン優先でVUメーターを付ける事にしましたが、スペースが足りないので1個のみにします。
(自分的には、なかなかかっこよい!!)
ツマミは、フェンダー製のチキンヘット型を使用して、すこしレトロ感を出してみようと思います。
とりあえず並べてみました!
電源SWは、色々探して、オムロン製にしました。
同じデザインでモーメンタリ形とオルタネイト形が両方あり、LEDも内臓していますので都合がよいです。
2005/03
前面パネルにVUメーターを付ける事にしているが、出力に直接つないでも、多分、針はピクピクするだけで
振れないと思われます。
アンプ出力とVUメーター間にアンプを入れる事にします。
OPアンプ出力にダイオードを入れて整流しただけの、超簡単回路にしました。
正確な、VUレベルを表示させるのは、以外に難しいです。対数アンプが必要で回路規模も大きくなりますので
まあ、雰囲気を味わう事とし簡単回路にしています。
2005/04
フロントパネルのレタリングを行いました。
ついでに仮組立て!
ほぼ予定通りのイメージです!
2005/04
配線作業の開始です。
配線も終わり、音出し確認OKです。
今回、CHコイルを実装するスペースが確保できなかったのでCHは未使用です。
CHの代わりに、1KΩ/1Wの抵抗を実装しています。
特にノイズ等も発生していないのでよかった!
電源コネクターは、なかなか使いここちが良いです。接続もしっかりしています。
完成!
音の第一印象は、帯域が広く感じます。
でも、高域のきつさなど無く、聞きやすいです。
次回から真空管の違いでの音質比較と特性測定を行う事とします。
2005/04
電気的特性は、
周波数特性: 10Hz〜100KHz(−1dB)
ひずみ率(1VRMS出力): 20Hz=0.145%、 1KHz=0.140%、 20KHz=0.148%
無信号雑音電圧: Lch=0.065mV、 Rch=0.060mV
入出力特性
特性的には、満足です。
さて肝心の音質です。
試聴予定の真空管を取り替えて自分好みのものを選びました。
最終的に、エリクソン製407Aにしました。
どれも非常に微妙な差なのですが、繊細さでは、WEが良い感じですが、私は力強い押し出す感じの音が好きなので
エリクソン製を当面挿して使用する事にします。
まあ、その内差し替えて楽しみたいと思います。
これで、完成です。
自分的には、満足できる物が出来たと喜んでおりました!
おわり