・7C5 PPアンプ
7C5シングルの音が、予想以上によく、すごく気にいりました。
そこで、PPでも製作してみる事にします。
1、製作前提条件
・回路はシンプルな事(シンプル=部品数少ない=部品代が安い!!=高音質!?)
・7C5PPアンプなのは決まっています。
前段は、ロクタル管の7F7または7N7を使用する事にします。
ロクタル管の姿が好きでよく使用してます。
また、シールド付ですので、外来ノイズにも強いです。
市場であまり人気が無いのか!?比較的安いです。
自分でアンプを設計する様になり何台か作りましたが、よく使う球がなんとなく決まってきてます。
6SN7や6LS7など使いやすくオーディオにはもって来いですが、USA球などは、人気があり高価です。
私は、ブランド主義ではないので安いメーカーを使用してますが、ロクタル管はその点使いやすいですし
真空管全盛期の製品であり、品質もよいと思います。
オーディオで使用する分類の球は、特性互換の球が存在し設計データーも豊富にあるので、設計が楽です。
7C5=6V6GT 7F7=6SL7GT 7N7=6SN7GT 5AZ4=5Y3GT
・電源には、整流管を使用します。(5AZ4)
・デザインの一部とし、終段電流監視用に電流計を付けます。
・トランスには、タンゴ製品を使用する事とします。
手持で未使用品がある事と、7C5シングルでも使用してよい結果を出しています。
2、シャーシレイアウトの設計
・これらの条件を元にシャーシレイアウトを設計します。
私の場合、デザイン優先で設計する事が多く、使用部品、回路もデザインで変わってきます。
最終シャーシレイアウト
穴空寸法
天板写真
色々考えた結果、モノラル構成としました。
横長のレイアウトになってしまいました。
穴開は、知人の工場で空けてもらいました。
鉄板2mmを使用した為、想像以上に重いです。
シルバーに塗装しました。
・シャーシ枠は、鉄1.6mmでWebで見つけた板金工場に注文中です。
1ケ月ほどで納入される予定ですので、その間に回路設計を行います。
3、回路設計
シャーシレイアウトが先に決まっていますので回路もほぼ決まってきます。
・トランス
これは、自動的にシャーシレイアウトより指定部品となります。
OUT FEシリーズ
PT PH−185
CH SCシリーズ
実際は、使用トランスを先に決めないとシャーシ設計出来ないので、頭の中では決まってました。
PT、CHは、手持ちを使用します。
PH−185、SC−3−210
FEシリーズは、最大10Wまでで、SGタップ無しです。
6V6GTの規格表よりPP負荷抵抗10Kで出力10Wと動作例が記載されています。丁度よいので採用します。
よって、使用OPTは、10KのFE−10−10に決めます。
・出力段の設計
動作例を元に設計しますが、前回7C5シングルである程度設計(動作確認)済ですので、シングルでの設計値を採用し
手間を省く事にします。
最終的には、組立て後に動作確認を行いますので、その時点で調整する事とします。
自己バイアス用カソード抵抗は個別で行きます。
・前段の設計
シヤーシレイアウトから前段に2球使用する事とします。
PK位相反転で行えば、1球で構成可能ですが、デザイン優先で2球にしましたので位相反転回路には7F7又は7N7の
2球構成で考える事とします。
7C5は、比較的高感度(入力電圧が低い)であまり前段で高ゲインとしたら、使いずらくなる事が予想できます。
よって、2段増幅は、採用しない事にします。
NFBで仕上がりゲインを下げる事も出来ますが、高帰還回路は、安定動作用の部品追加が避けられず
シンプルな回路と言えなくなりますし。
今回は、差動増幅位相反転回路を使う事にします。(回路が簡単、シングル増幅でのデーターが流用出来る)
差動増幅位相反転回路で一番の問題は、共通カソード抵抗値を大きくするか定電流回路を採用しなければならない事です。
また、マイナス電源が必要ですし、普通に考えると回路規模が大きくなってしまいます。
シンプル・イズ・ベストの精神から行くと回路規模は小さくしたいです。
素直に定電流ダイオードを採用し、回路をシンプル化します。
・電源の設計
B電圧に整流管を使用する事は決定です。
定電流部には−電源を用意します(−10〜−20V程度)
NFB用の帰還抵抗値は、最終調整時に決める事とします。
ここで机上設計は終わりです。
実際は、電卓片手での計算など何もしていません・・・
全て、シングルアンプ製作時データーの流用です。
アンプの設計と聞けば難しいと思われるかもしれませんが、雑誌やWebで独自回路を発表するならともかく、
豊富な過去データーを参照し初期設計は、比較的すぐ出来ます。
私が思うには、電子回路の知識が必要なのは、普通のアンプでは初期設計時より、
完成し調整する段階で必要になると思っています。
動かない時に原因を探し、解決する事の方が大変であり、時間、知識を要します。
アンプ部回路図 電源部回路図
2004/10/29
まだ、シャーシ枠が出来上がらず、中断中です。
前回の回路説明で少し簡単に書きすぎたかと思いますので、もう少し掘り下げて!?書いてみます。
前段は、7F7パラレルでの差動回路になっています。
ここでは1球当たり、約1mA流す予定です。
よって、2球分で2mA流れますので定電流ダイオードは、E−202を使用します。
回路図では、E−202を使用するよう書いてますが、手持ちにE−202は無いので新規に購入するか、他の値品をパラレルに使用
するかもしれません。
2mAの定電流回路を作れば良いので、この辺はアバウトに考える事としています。
定電流ダイオードは、カタログ上電流値のバラツキが大きいので、E−102(1mA品)あたりをパラレルにした方が調整が楽かなとも
思えます。
電源では、ヒーター回路を7F7、7C5の組み合わせで使用しています。
規格表での各球のヒーター規格は、
7C5=7V、0.48A 7F7=7V、0.32A となっています。
ロクタル管のヒーター規格は、7Vですが、これはロクタル管の使用目的から来ている規格であり、
6.3Vで使用してもなんら問題ありません。
聞いた話ですが、ロクタル管は、航空機に搭載出来るよう設計されたようです。
航空機のバッテリは、充電状態により電圧変動があり、満充電時では、7V程度の電圧になる事もあり7Vでも正常動作するよう
ヒーター規格が決められているとの事です。
当然、バッテリが使用されある程度電圧が下がっても使用可能なはずです。
多分規格上は、6.3Vでも問題ないと思いますし、実際使用出来ています。
本題ですが、PH−185では、6.3V2.5Aタップよりヒーター供給した場合、電流が最大値の半分以下しか流れない為端子電圧は
6.3V以上になると思われます。
真空管でのヒーター過電圧は、寿命を短くしますが、この点でも都合が良いと思われます。
トランスの端子電流値を合わせて出力電圧を同じにする為、7F7、7C5の組み合わせで使用する事としています。
定電流回路用の−電源は、残っている6.3V2A端子より作ります。
6.3Vを単純に整流した場合、約8V程度の直流電圧が出ると思われます。
定電流ダイオードの規格表では、E202での端子間電圧とし約10V程度必要みたいです。
ギリギリかな!?とも思えるので、6.3V端子を倍電圧整流し直流出力電圧を上げる事にします。
計算上は、15V−17V程度は出るはずです。
+B電源は、AC280Vを5ZA4で整流し、100mA流した場合、規格表より、約290V程度の直流電圧を取り出せそうです。
SC−3−210の直流抵抗値は、55Ωですので、+Bは約285V程度と予想します。
真空管回路の場合、机上での計算値は、目安でしかありません。
個々の真空管で+−10%程度の電圧差は出ますので、最終的には、組立てて現物にて確認する事が必要です。
4、製作
2004/11/12
配線準備を行います。
CR以外の主要部品を天板に取り付けました。
CRの取り付け、配線を行うのに簡単な回路なら、すぐに半田コテをにぎり製作にかかる所ですが、綺麗に手戻りを少なく組立てる
為に、配線図を書く事にします。
配線図を書く為にも、主要部品を取り付け実際の部品方向などを確認しておきます。
2004/11/15
配線図完成・・・たぶん間違えが有るかな!?と思いますので、ここでは配線のイメージ作りを行います。
実際の配線作業時には、配線図通りには行かない所が出ると思いますので現物合わせで配線作業を行う事とします。
配線図
配線図を書きながら回路図を追うと、間違えを発見・・・出力管カソードバイパスコンデンサの耐圧が足りないです。
回路図では、10Vとなっているが、実際は10数ボルトの電圧がかかるはずです。
よって、ここには耐圧25V以上品を使用しなければならない事になります。
回路定数は、組立て調整時にも変わる可能性があります。
間違えは、必ず誰でもあるものです。!?
2004/11/17
Webで見つけた板金屋さんへシャーシの枠を注文していたが、やっと出来上がって来た。
10mmのミミが付いた鉄枠を注文したつもりだったが、来た物は・・・・
箱型の物が来ました。・・・
図面の書き方が少し悪かったかと反省点もあり、無銭家なのでこのまま使用する事とします。
下板を使わないで上板のみを使用すればOK。
黒色にスプレー塗装しました。
2004/11/18
使用部品の在庫を確認し、不足品の買出しを行おうと思います。
普通は、一番最初に部品集めを行うかと思いますが、何台もアンプを作っていますと自然に手持ち部品がストックされてくるものです。
真空管のストックを確認したら・・・
7F7が無い・・・
本機では7F7を4本使用しますが、手持品を確認した所、7F7が4本、14F7が2本ありました。
数量的には足りているのですが、メーカーがバラバラで4本でした。
・・・・気分的に同じメーカー(外見)で統一したいので7F7を新規購入する事とします。
Webで探した所、なかなか手ごろ(価格的に)な物が無いです。
1本2千円近くが相場みたいです。
少し高い! 4本で8千円か〜・・・送料も加算されるので1万円の出費になります。
14F7なら、1本、千円以下で入手出来る所を見つけました。(安い!)
14F7は、7F7のヒーター電圧違いで他は、同一規格品です。6SL7の12Vバージョンと思えばよい品です。
6SL7GTの12Vバージョンで12SL7GTが有りますが、半値以下で売られている事もたまに見かけます。
ヒータ電圧の違いだけなので、もっと見直されてもよい品だと思ってます。
今回は、14F7を使用する事にします。
よって、ヒーター回路の変更が必要になります。
他の不足部品は、何時も利用している、札幌の梅沢無線で調達しました。
修正済アンプ部回路図 修正済電源部回路図
カップリングコンデンサは、オレンジドロップ、カソードバイパスコンデンサーは、エルナシルミックUを使用する事にします。
その他部品は、一般品ですが、信頼性が高いもの(常用品)を使用します。
5AZ4(5Y3GT相当)ロクタル管です。
特徴として、ピンが細いです。
細いですが、非常に硬い材質で出来ています。
ロクタル管専用ソケットです。
ロクタル管を使用する為には、専用ソケットが必要です。
手持ち品を紹介します。
左から軍用テフロン品、中国製セラミック品、ドイツ製モールド品です。
今回は、左のテフロン品を使用します。
このテフロン品を使用する時の注意点として、ケーブル側のピンが非常に細く部品取り付け時など力がかかると折れる事があります。
折れると使い物にならなくなるのでピンに無理な力がかからない様注意します。
2004/11/21
今日から配線作業をはじめました。
配線用電線は、何時も使用している古河電工製の耐熱電線を使用します。
この電線は、ハンダコテを当てても被覆が溶けないので綺麗に配線出来ます。
ただし、被覆が硬く、曲げにくいです。
古河電線製品案内
ハンダは、アルミットを常用しています。
私の使用頻度では、1ロールあれば、5年以上使用できる量です。
電源、ヒーター配線まわりから配線をはじめました。
2004/11/24
少しづつですが配線作業が進んできました。
けしてピン張配線はしないで、少し余裕を持たせて配線します。
後で、束ねる時に綺麗になります。
部品の下に配線が来るようにする為、この段階では、CR部品は取り付けないで配線のみ行います。
2004/11/27
今日1日かけて一通りの配線は、終了しました。
明日から、部品取り付けに入る事にします。
綺麗とは言えない配線になりました・・・
配線が浮かない様に要所をタイラップで固定しています。
2004/12/1
定電流ダイオード(CRD)は、E−202(2mA)タイプを入手しました。
定電流ダイオードは、規格上電流値に多少バラツキがあります。カタログによるとE−202で1.68〜2.32mAとなっております。
最低値と最大値との差は、0.64mAです。
左右であまり値が違うにも気持ち悪いので、近い値の物を選別して使う事とします。
選別回路は非常に簡単です。9V電池と抵抗1本で出来ます。
選別回路の抵抗両端電圧を測ると、定電流ダイオードの値が判ります。
今回4本購入し測定した所、2.02mA、2.11mA、1.81mA、2,32mAでした。
よって値の近い2本を使用する事とします。
2004/12/5
製作開始からだいぶ時間が経ってますが、こつこつ作ってます。
今日で、部品取付けがほぼ終了しました。
写真を撮ろうとした所、・・・デジカメの調子が悪いです。
シャッターを切ると電源が落ちてしまう・・・!?充電してもだめなので壊れた可能性大!?
よって写真無しです
とりあえず誤配線のチエックを行い。電源部のショート確認をしてから整流管のみ挿して電源ONしてみました。
B+電圧は、ほぼ正常にでました。ただ、左右で整流後電圧に約10Vほど差がありました。
たぶん整流管の特性差だと思います。
最終的には、アンプ部動作後に再確認します。
約1年ぶりに作ったアンプですが・・・そうそうに感電してしまった・・・感電には注意を!次からゴム手袋の出番かな!?
2004/12/8
デジカメ修理中でしたが、修理完了で帰ってきました。
本日で完成!!です。
最終アンプ部回路図1 最終電源部回路図2
NFBは、約5dBです。
測定結果は、
周波数特性 10Hz〜100KHzで-3dB
無信号雑音 0,15mV
ノンクリップ出力 8W
ひずみ率
20Hz:トランスが小さいのでこんなもんでしょう!?
1KHz:まあまあの特性です。
20KHz:少出力で悪化しているのは、ノイズの影響です。ひずみ率計のLPFをONにすると1KHzとほぼ同じ値になります。
特性的には、まあまあかと思ってます。
定電流ダイオードを採用したためか位相反転段のバランスはよいです。ひずみ率に現れています。
入出力特性 周波数特性 ひずみ率特性
反省点
最大出力が予定の10Wに達していません。
原因は、初段の14F7のゲインが低い為です。
動作電流を調整し、負荷抵抗を上げれば、ゲインは上がると思いますが、私の使用環境では、けっこう良い音で鳴っているので
あまり手を入れる気になりません。
当面は、現状で使用してその内改造するかもしれません。
完成直後に周波数特性を計ったら60KHzで-11dB落ちでした。
まあよいか!と思っていた所、測定器のLPFがONになっている事に気づき再測定した所、
なんと100KHzで-3dBの結果になりました。・・・最後まで気を抜かぬよいに!反省です。
試聴の感想です。
シングルに比べて、低域の量感があります。
中高域にも張りがあり、私的には、成功かと思っておりました。
予定通りのプレート電流値です。
おわり